一発殴らせろという話。

やまぴー、って、一種の治外法権みたいな人だった。(ような気がする)。

その昔、滝沢の右手は誰かの頭を撫でるためにあって、そのちょうどいいところに山下がいた。相葉ちゃんの背は高く、ニノは撫でられるタイプではなく、潤くんはさっさと大きくなり、斗真は撫でるよりいじくりまわす系統だったので、「オレはそういうタイプじゃないです」みたいにはっきり拒絶の顔をしつつも、おとなしく撫でられているのが山下くんという人に課せられた役割だった。

山下中3、斗真高1の頃、笑っちゃうくらい仲悪かった。ものっそ近い場所で踊ったりしてるのに、わざわざ顔そらしてすれ違う。これはー・・・潤くんみたいに、山下も高校行かないって駄々こねるんじゃないかな的反抗期とこじれ方だなー、誰が説得すんのかなー、山下の場合は行かなくてもいいかもしれないけどなー、と思っていたら、あっさり堀越にすすみ、いつのまにか斗真との仲は修復し、制服姿の2ショットが路上で売られまくるという、今思えば夢のような2年間もあった。

やましたくんとあかにしくんとかめなしくん、の場合はもすこし複雑で、一度滝沢が間に入ったというほどに複雑怪奇なこじれ方をしている時期があった。それが解けたのか?と言われると、まだな気がする、と答えるしかないような気がする。

当時、ジャニーズJr.という存在そのものが、治外法権のような立ち位置にいた。
ものすごい人数がいて、一人一人がものすごい数の女の子のハートをがっちり掴んでいたあの頃、デビューしてない分自由があり、わりとみんな好き勝手なことをしており、仲良かったり悪かったり高校行くの行かないの、テストで休むの修学旅行行ったの、ラジオ来なかったから辞めたの辞めないの、ネットの黎明期と相まって、その日誰がどこで何をしていたか、が、わりと混乱なくそれを知ろうと思っている人皆に伝わるような、プライバシーはないんだけど今より全然あるみたいな、ちょっとおもしろい過渡期の現象があった。

私にとっては。
私にとっては、その頃がすべての基本なので。

べつに、自分の好きにしたらいいと思うけど。

だって、ぴーは治外法権なその中でも、ずっとスペシャルに治外法権だったわけだし。
それは、「やまぴーだから」ずっと許されてきたことなわけだし。

でも、ただ、単純に、一発殴りたいとは思った(笑)

それは単純に私の個人的な感傷。
斗真が山下と一緒にデビューできなかった時、これでもう斗真が歌ったり踊ったりすることはないだろうと、薬局に流れる♪フレーフレーきみに、のフレーズを聴きながら突然泣けて泣けてしょうがなかった、そうだよおまえほんとにがんばれよ、今まではみんながかわいがってくれたかもしれないけど、どう考えてもこのデビューは山下が真ん中にならないといけないんだから、それが山下にとって一番いいって社長が判断したならそれはその通りかもしれない、もうかばってくれる人はいないかもしれないけど、もしかしたら山下はリーダーに向いてるのかもしれない、だからがんばれよと、そう思って、いろんなことに蓋をしたわたくしの個人的感傷として、一発殴らせろと思うという話。

「やっぱりそうなんだ」とか「じゃあ最初から断ってろよ」とか「なんで今」とか「なにかんがえてんねん」とか「いやいやそれなら亮ちゃんだけでもよかったんじゃ」とか「つか亮ちゃんもなんで今」とか「一人になってもがんばって」とか「4人でもがんばって」とかいろいろ科白はあるだろうけれども、あかにしくんの時にも感じたことは、もう、しかたがないのだ、という、ストレートすぎる事実確認それのみである。

しかたがないのだろう、という、事実がそこに横たわる。
そしてその、しかたのなさ、を、わたしたちは多分心のどこかでわかっている。

しょうがないよね、と言って、さっさと次のコンサートチケットの確保のための算段をする。
あんまり泣いてる暇も実はない。

ただ。

ときどき、思い出すのだ。

あのとき、すっごく、楽しかったんだよ、と。