電光石火 〜They武道クリエ2015

「みんなで武道館行こうぜーーー!」



と叫んだ林くんの言葉は、花火みたいだと思った。



野外コンサートのアンコールで見る、大きくて派手で色と音がにぎやかな、打ち上がる花火に合わせて歓声が抑えきれないような、そんな、花火。



消えてしまうけど、いつまでもいつまでも体のどこかに残っている。



みんなで武道館行こうぜ。



鮮烈で、強く光る花火みたいだ。



「行こうぜ」は、「行こうね」と「行こうぜ」の中間くらいの音だったと記憶している。



「行こうぜぇ」とか「行こうねぇ」とか、最後の「え」の音が長く長く伸びて、その打ち上がる花火の音を聞きながら、歓声が長く長く伸びた。



長く伸びる間に、亮太くんは大袈裟によろよろっと体を動かして江田ちゃんにぶつかりながら、「なんか、(話が)おっきくなってる!」って、笑ってた。



りょうちゃんは、結構な昔から、デビューしたい、とか、口にしないらしい。



たしかに、今目にできる範囲のものでも、みんながデビューって言ってる時に、CMやりたい、とか、言っている。



ざっと過去に目を通しただけでも、そういう位置にいたこともあっただろうに。だから、なのかは、わかんないけど。



りょうちゃんが、「They武道はみんなのもの!」って突然言い出したのは、クリエの最後の日。



1人ずつ自己紹介していく流れの時に、お兄ちゃんガチャの話で、「超ドS級ランク」って自分で言ってみたり、「好きなたべものはパンケーキです」って言ってみたりしてた、その口調だった、最初は。



最初に幕が下りる時に、急に、「They武道はみんなのもの!」って言い出して。



そして、最後に幕が下りる時、「みなさんは、They武道のものです!」と、言い出した。



みなさんは、They武道のものです。そう言ってから、絶叫するように客席に問いかけた。



They武道はっ!?」



泣きそうだな、と思った。一瞬。泣きそうなのは、りょうちゃんが。



They武道はっ!?」 泣きそうな絶叫。ちゃんと返ってくるのか、もしかしたら不安だったのかもしれない。



They武道はっ!?」 \みんなのものー!/



「そう!」



返ってきた、その一瞬に笑顔。一瞬で消える花火。



3日間が終わる一番最後に「みんなは、They武道のものです!」と、言い切って。



They武道は!?」\みんなのものー!/って言わせた後で。



「一生、それでお願いします!」って。



一生、って、なげーな。武道館行くより、ある意味話でけーな。



一瞬で消える、一生、どこかに残る(かもしれない)花火。



りょうちゃんは、自分は一生とか言い出すくせに、江田ちゃんが「これからも、俺らについて来いよ!」って強く強く言い切った時、えっそんなこと言っちゃうのヒューヒュー(古)、みたいな顔して、笑ってた。



「不時着しません!」って。



ついて来いよ、って、言い切れるようになった江田ちゃんは、不時着しません、って、言った。



搭乗券を入口で配らせてもらったんですけどね、っていう話の途中。



夢に向かって、旅をしていきましょう、っていう話の中で、急に。



「不時着しません!」って。



着陸できる空港があるのか、そもそもホントに離陸してんのか!?燃料補給してもらえるの!?



心配すること、いっぱいあるけど。



もう全然飛んでるつもりで。多分、もうシートベルトも外してて。



2013年の同じ頃、「またここに帰ってきたいです」って江田ちゃんは言ってた。



今年は、「1年に1回しかないこの機会に」って言ってた。



1年に1回の花火みたいな飛行機は、ずっと空を飛び続けられるのか。不時着もせず。



最後の最後、3人で緞帳前に出てきた時に。



「主役だ!」と江田ちゃんはつぶやいて。



ここ長くすると泣いちゃうから、って言うりょうちゃんに、泣いていいんじゃない?って林くんが言った。



でも江田ちゃんは、「とっとけとっとけ」って言ったのね。



「確信しました」って林くんが言う。



「ツアーも夢じゃないと思う」って林くんが言う。



たとえそれが、花火、でも。



「とっとけ」って言うのは。その、花火のために、とっとけ、って。



りょうちゃんは、泣いてないけど泣いてたし、泣いてたけど泣いてなかった。



とっといた、のかどうかは、わからない。



みんな、それどころじゃなかったのかもしれない。



3日間、電光石火の猛スピードで通り過ぎた感がある。



長丁場の舞台から中1日、準備に1年かけた本番の直前には全然時間がなくて、でも時間がないとは絶対に言わなくて、いろんなことにかまってられなくて、必死のまま、1年分の感情もそのまま直線的に解き放たれて。



一生続く(かもしれない)、一瞬の、花火。