DIGITALIAN

Asteriskのイントロがかかった瞬間に光が空間をうめつくしたとき、フライパンでぶっとばされたような気がした。

その光。制御型、だと言われていたペンライト。

ジャニーズ以外のライブやイベントの会場で使われ始めた、制御型のライト。入口で配られたり椅子に置かれていたりする。リストバンドの形だったりもする。こっちでスイッチ入れたり色を変えたりするんじゃなくて、自動制御で色が変わる。空間も演出の一部になる。

文字だけでそんな情報を目にしていた。ふぅん、程度の感想だった。ジャニーズには向かないんじゃないの、的な。色なら、べつに自分で変えればいいんじゃないの、程度。

それを、ウチワに仕込んだという。ウチワの名前はファンライト。配布じゃなくて、物販。買ってから、デジタリアンエリアとやらでタッチしろ、とのお達し付。ただでさえ時間がかかる嵐の物販、そんなことしてだいじょぶか?だいじょぶじゃないよね?どーすんの?

ザワザワしていたとき、潤くんは、Webで手順を自ら説明するという手段をとった。

あれ?このひと本気だぞ?

初日、福岡でファンライトとやらを買った。デジタリアンエリアは激混みで、入場制限をしていた。そ、そりゃそうなりますよね、と思いながら中に入って、しかし。

Asteriskのイントロとともに、人の手のスピードでは到底不可能なライティングが空間いっぱいに広がったとき、Webを使ってまで潤くんがなんとかしたかった光景はこれなんだ、自分ぜんっぜんわかってなかった…って。

ほんとに、フライパンでぶっとばされた。

その光の渦、なにより、真っ暗にする、ということが瞬間でできること。1秒よりも短い間に、人の手では到底不可能な真っ暗と光の渦を一直線に生み出すことができること。客席をとにかく多くとらなければならないという至上命題を抱え、ステージを広くはとれない状況下で、空間すべてをステージに変えるということ。

Popcornからの嵐は、その昔「嵐コン」と呼ばれたものを、もう一度丁寧につくろうとしている印象を受ける。そのためには、制御型のペンライトを椅子の上に置くのはナシだ。買う手間と、デジタリアンエリアとやらでタッチする手間がかかる。仕組みを理解するのに、ちょっと時間がかかったりもする。

不親切だ。うん、不親切だとおもう。

でも、たぶん、それが「嵐コン」なのだとおもう。

「嵐コン」における客席について、彼らは客席が消費者であることを否定しない。しかし、もう一歩踏み込んでおいでよ、と、手招きすることを地道に繰り返している。

準備はできてるか、とは、準備をしたら、きっともっと楽しいよ、ということだ。

消費者であるのではなく、一緒に嵐をつくろう、ということだ。

5人はしぬほど嵐を大事にしている。その嵐を、一緒に大事にしよう、ということだ。

それが、わかんなくてもいいよ。消費者でもいいよ。意見も苦情もクレームもなんでも聞くよ。なんでもいいよ、けど。

こっちにおいでよ。そうしたら、きっともっと「嵐コン」は楽しい。

Take Off !!!!! で動き出したそのステージは、もう、スケステとかムービングとか呼ぶようなものじゃなかった。5人を乗せたステージが、そのまま、ほんとに、そのままの形を保ってすすんでくる。

ウィング、と呼ぶのだという。大きく広がった翼の形。

いちばん、いっちばん最初、この動くステージは、それを動かしているらしき機械とともに、何人もの人が一緒にくっついて歩いてくる代物だった。安全性に問題はないのかと疑われて、正式な許可が出ていないまま、大阪城ホールに勝手に持ち込んで勝手に組み立てて、とにかく一度見てくださいとかけあった代物だ。

それが。翼になった。空も飛べるような。

Hope in the darkness
最初、すごーく苦労してた。無音の時間が長いのをBGM入れて、その音の大きさをすごく考えてみたり、全体の尺を見直してみたり。

手を変え品を変え、それでも、やめない。やりたいこと、やりたい形。みんなに見せたい景色。爽快感。空気や感動や、きもちに直接触れるような空間。

やらされてるんじゃない。やりたいからやっている。

そういう潤くんの熱を、わかってくれる人が15年もずっと一緒にいてくれているということ。

Zero-G終わり、豪快な花火とともに、その翼から飛び降りて消えたきり、真っ暗なまま放り出された客席で、うちふるえる、とはこういうことかと感動していた。

大昔、密度の濃かった客席でさえついていけずにぽかんとした、あの終わり方を今ドームに突っ込んでくるその度胸と、またこれができるようになったんだという感慨のようなもの。

なにこれ、わかんない。わかってよ、これならどう?そんな、押し問答みたいな。

放り出された客席で、わたしは!いま!嵐コンを!みている!!いま!嵐コンの!ただ中にいる!!…って、内心でずっと叫んでいた。

最高だ!!、って。

初日、盛大にぽかんとさせて、翌日どうしてくるかなと思ったら、THE END とスクリーンに出してきた。

ぽつんと、それだけ。

美意識!と思って、また、勝手にうちふるえていた。

福岡の後で曲順を随分変えたけど、最初と最後は変えなかった。

そういう、潤くんの、意志、みたいなものが好きだ。

潤くんは、もともと、万人に受け入れられるタイプの人ではなかったし、いわゆる良い人なタイプでもなかった。我も強いし、言葉も強いし、どっちかといえば、ボッコボコに叩かれるタイプの人だった。そんなことを思い出していた。

それでも、それゆえ、だからこそ。

その奥にある意志の力と優しさと柔らかさ。

気球で登場する「アンコール」、幸福に包まれるGUTS!、そして、一周してまたDIGITALIANに戻る、キミの夢を見ていた。

キミの夢を見ている。キミの夢を見ていたい。

キミが見る夢、キミが見る嵐。

キミが願うなら、このままずっと、空も飛べるような翼に乗せて。

おたんじょうび、おめでとう。