第五夜 -Sakuraフル

最終日の夜。雷が、鳴らなかった。

雷鳴とどろく、効果音。

曲順は、愛想曲~Sakura~(雷鳴のSE)~ひと夏の…、と続く途中。

雷鳴の音は衣装替えのためで、この間は照明が暗くなっていて、その間に一回引っ込んで衣装変えて出てくる。

セレネイの和装はこれで。

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Sakuraの衣装はこれ。

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パンツは赤で同じ。ヘッドセットも取らないで、刀を置いて上の和装を解いて、ジャケットをはおる形。

セレネイ終わりで照明が徐々に暗くなる。

雷鳴が鳴る。

そのはずが、雷鳴は入らず、1秒くらいの隙間の後に、入ってきた音はSakuraのあの、印象的なイントロだった。

そのまま、照明がついてしまって、一瞬、うっ……みたいな状況のステージが照らされた。そこに、林くんがいなかった。

林くんは、衣装を脱ぎながらソデにいちはやく消えてしまっていた。

セレネイ終わりで照明が消えて雷鳴が入るまでの一瞬、多分、雷鳴が聞こえる前にいつものタイミングで衣装替えに行ったんだと思う。

そしたら、雷が鳴らなかった。

照明がついて、Sakuraの音が、かかってしまった。

りょうちゃんは、一瞬、上を向いたように見えた。雷が鳴らないこと、照明がついてしまったこと、流れ出しているイントロの間で、明るい光を、うっ……、という顔をして、見た。

それから、これも一瞬、周りを見た。ステージに残っていた人は皆当然和装のままで、そして、一人、いない。

どうする、と考えている時間もないまま、りょうちゃんは猛烈に踊りだした。

一瞬上を見て、一瞬周りを見て、そして、全部振り切って全身で踊りだした。

それ以外の答えなんかない。

りょうちゃんはいつもいつも、何があっても最優先は踊ることで、それ以外はなんもない。

 

 

一瞬上を向いた時、一瞬まわりを見た時、なんで、って思わなかったはずはないけど、そういう気持ちも全部、全身全霊のっけて踊る。

衣装を変える時間も、汗を拭く時間もないまま、そのまんまの気持ち全部のっかって。 

 

えださんは、一瞬固まって顔を見合わせた後、刀をソデに投げて踊りだした。

こたくんは、このまま踊るんだな、という周囲の状況を確認して、踊りだした。

めぐさんは、衣装を脱ぐか脱がないか一瞬手をかけて、そのままいく、という様子を見てそのまま踊りだした。林くんのいるだろうソデをすごく気にしてた。

はらさんは、あきらかに戸惑ってはいた。 

 

このままいくぞ、というイメージが共有されて踊りだしたあたりで、誰かの声がした。

いろんな話を総合すると、この声は多分ソデにいた林くんの声だとおもう。

たぶん、「やばい」とかそんな感じ。

衣装脱いじゃってるから、「やばい」、出られない。

この時ヘッドセットつけたままだから、その声を拾っちゃったんじゃないかなー。

Open your heart のあたりで林くん戻ってきて

すごい褒めてるんですけど、ほんとにあの、しれっと、猛烈にしれっとして戻ってきて。

何か問題でも? って、ほんとに、ほんとにそんな顔してて。

何も問題ないですけど? って。すごい、ぱっと明るくて。

林くん明るいなーって思って、なんだか、それがひたすらにうれしくて。

林くんが戻ってきて、しれっと踊りだして、最上手に来たりょうちゃんがぱっと横を見て、揃ってるの見てへにゃっと笑った時。

このSakura、猛烈に美しいなぁ、って、思ったんすよね。

和装で桜吹雪が舞って汗だくのままで、美しい。

そんな、Sakuraの後。

いつもはここで衣装替えはしないけど、ハンドマイクとタオルを取りに行く間合いがあったから、ステージで煽る人と、ハンドマイクとタオル取ってくる+衣装替えする人も自然に分担できて、想定通りみたいなつなぎでいけたから、それも美しいなぁって、思って。

ここのつなぎ方がおそろしく自然だったから、和装は想定内の話で、林くんのは別の何かのトラブルに見えた、みたいな感じもあったんじゃないかなぁ。

なんだか美しい。

綺麗で、そして無条件に美しい、和装のままの、Sakura。