真夏の地下の感情の行方(2)
水道橋の地下の秘密結社、風 is a Doll?は、ちょっと、どうかしていた。
いろいろと褒める言葉を探したけれど、どうかしていた、っていう表現になる。
嵐のOh Yeah!で、ふうまくんが客席に歌わせるんだけど、どっからどこまで歌わせるかというと、
自転車のーうしーろーにー
から、
キラキラふたりだけの朝と自由
ここまでである。
長い。長すぎる。かけるせいじゃくのみちを、とかのあのあたりも、客席である。すげぇ。まったく知らないひとだっていっぱいいただろうに、すげぇ。かめなしくんの突然入る「Say!」もびっくりである。
そっから、りょーおーて、って入る時に、ステージをぐるっと囲んだ客席がタオルを振りまくっている光景は、『夏コン』を形にしたらこうなります、っていう、お手本みたいな景色だった。
Oh Yeah!が文字通りキラキラと反射していて、あの、嵐が初めてドームに手が届いた時のその曲がこんなにぴったりの場所でぴったりに使われていることに、ちょっと感動して涙出た。
そう、ちょっとしたことに涙出る。そんな、ふまソロだった。
何を期待して、どんなものが見られると思っていたんだろう、と考えても、いまいち思い出せない。ふまソロに、何を賭けていたのか。タイトルがDollって出てきた時は、「ちゅっ、ちゅうに!!」と思わず口に出したことはかろうじておぼえている。
ちゅうには、ちゅうにだ。人間になりたい人形、とか。恋心を盗み出す、とか。決起集会、とか。ばかにしようとしたり、真顔になろうとすればなれたはずだけど、そうならなかったのはなぜだろう。
ままならない世の中で、人形になるな、人間になるんだ、って。誰かの背中を押したい。
ふうまくんは、囲みの会見で、そんなふうに言ったらしい。
人間になるんだ。
このひと、本気でそう思ってる。本気で、それだけで、何かを突破しようとしている。
そんな感情に触れた気がした。痛いほどに。
一緒に人間になるための仲間(なかま、っていう表現はどうかと思って)(でも、Dollはなんてゆーか、仲間、っていう表現しかみつからなくって)には、ふうまくんが自ら出演をお願いしたっていう。
仲が良いのは、仕事はやりにくいこともある。やすいくんは、仕事はどうかなって思った、って。でも、ふうまが言うんだから、なにか、あるのかなって思った、って。
ふうまについて行ったら、なにか、あるんじゃないか。こうしたい、あぁしたい、を、こうすればいいんじゃない?あぁすればいいんじゃない?って、形にして。その姿を実際見たわけじゃないけれど、きっとそうだったに違いない。そうじゃなきゃ、あの空間はつくりだせない。
『夏コン』を、粘土でこねて、形にしたような、あの空間は。
Jumpin' up のラップの前に、ステージと客席で声をそろえて、「ふうま!ふうま!ふまふまふまふま!」って叫べるような、あの空間は。
でも、みんなもしかしたら最初は、「え、おれ?」って思ったんじゃないかって。もともとツアーとかについてたとかならともかく、それこそ、やすいくんとか、じゅりとか、パーティーピーポーにはなれねぇなって思ってたさなだくんとか。
ふうまくんは、ジャニーズが、ジャニーズっていう世界が、すっごくすっごく好きだし、すっごくすっごく理解してるのかもなぁ、って、思った。
ひとり、の、ソロの限界を知っている。1人と「バック」の限界もわかっている。だから自分をひとりにしなかったし、みんなを「バック」にしなかった。その方が、可能性がしぬほど広がるって、それがジャニーズって世界だって、そういうことを、ふうまくんはわかっているんだろうって思った。
だから、いちばんさいしょ、一番最初の、自分が何やってもいいよっていう箱と時間がある時に、Dollにしてみたのかなぁ、っていう。まぁでもこれは全部妄想だし、所詮結果論だし。でも。
最後の日、リリックを歌い終わって、くるっと後ろを向いて、うぉー!みたいに、すっごい吠えてて。泣きながら客席にむかってあいさつして、ふりしぼるように、ため息をつくように、ぽつんと、
「終わりたくないんすよ…」
って、言った。
ずっとしゃべってたら、このままでいられるのかなって。
夢みたいなことを、言った。
でもその夢みたいなことを客席は、本当にそうなればいいのに、って、わんわん泣きながら受け止めて、Dollになったひとたちも、アンコールで出てきたときに泣いたりしてるの。
終わっちゃうってわかってるからいいんだ、って、それは、わかってるのにね。
かたくななまでにSexyZoneの曲をやらなかったふまソロで、でも、最後の日の最後のアンコールは、SesyZone(曲)を持ってきた。その直前までみんな号泣してたくせに、すっごい笑ってる。
ワイルドになるところで、みゅーとがすっごい勢いでステージ中央に走ってきてポーズを決める。
2曲目、セクサマの時は、波をつかまえに全員が中央へ走ってきた。みんなでステージ中央の狭いところでぎゅーぎゅーになりながら、ぴょこんっ、って、跳ねて、波をつかまえる。
ふうまくんには、帰るところがある。この曲を歌う場所がある。
そういうふうまくんに集められたDollから、ふうまくんへの手紙、最後の言葉。
おれらも負ける気ねぇからな。
負けない、って誓った、人間になる途中の、人形たちの、夏。