山本亮太くん(宇宙Six/ジャニーズJr.)(今年30歳になります)に降ってくる主演舞台が、死生観にとらわれすぎているのはなんでだ? …っていう話したい。
死生観というか、死、そのもの。
初、という頭文字がついた単独主演舞台、山田ジャパン(劇団)『HEY!ポール!』2019.07.18~21 東京・草月ホール。
役柄は35歳、人当たりの良い無職の男、ポールダンスの店に夜な夜な入り浸っている、という事前情報だったはずだ。下ネタのある大人のコメディーですよ~、みたいな、そういう触れ込みだったはずだ。
しかし。
35歳無職の男は、前職が新聞記者(政治部)であり、仕事に邁進するあまり、妻と娘と軋轢があって、結果的に妻と娘は事故か自殺かわからない死に方をする。男は、その罪悪感を抱えたまま死んだように(上辺は明るく)生きていたが、今一緒に暮らしている彼女の心配を余所に、最終的に、自ら望んで死を選ぶ。
……いやいや。下ネタのある大人のコメディーじゃなかったんか。いや、下ネタのある大人のコメディーだったけど。だったけど、こんな重いって聞いてない。
「人当たりの良い」主人公、平汰。人当たりは確かに良いけど、笑っているのに空っぽで、どこに本当があるかわからない。楽しそうなのに、そこに本当がない。
こんなりょうちゃん見たことない、はずなのに、いつかどこかで見ていたし、現在進行形で見ているような気にさせる。
そして、何もかもを振り捨てるように、平汰が死に向かって「のぼって」行くクライマックス。その直前の、のぼって行く、と決意した独白。目を涙でいっぱいにして、なにもかも自分のせいだ、と語るその内面に、誰の声も届いていない。
のぼって行く、その直前のセリフは、「もう、寝ま~~~す」
「もう、寝ま~~~す」
背後にみえるのは、諦念、のようなものと、色濃すぎる死への誘い。
りょうちゃん、あんな人なのに(あんな人)。
パブリックイメージ、”めっちゃ元気なバカ” なのに。(言い方)。
劇団である山田ジャパンに客演の主演として招かれた理由は、主人公力のようなもの、だったという話があった。
ぱっと出てきた時に目を引いて、観客をストーリーの内側へと引っ張り込んで、一緒に物語を旅していける力強さ、そういうものが山本くんにはある、と、言ってもらっていた。
ストーリーはさまざまな登場人物が自身のことを語る群像劇でもあったから、そこに埋もれずに観客を最後まで引っ張れる力強さ、というのは、わかる。あと、物理的に6メートルのポールを腕の強さだけで上り切れること。
それは、そうなんだけど。
わりと前からずっと不思議だったことがあって。
踊る時に。
ジャニーズ的に、いわゆる「エロい」と評されるダンスをする時に。りょうちゃん、なんですぐ死んじゃうんだろう、って。
別にやる気がないとかそういうことではなくて、こう、極力、いわゆる「エロい」から自分を遠ざけていくような。
昔の映像見てても全然そんな感じしないから、これは一体いつからなんだろう。
私の記憶にあるのは、いつかのクリエで、Monsterだったかな、江田さんの振付でね、エアーで女の人とクラシカルなワルツ的なダンスをする、っていうやつ。エアーだから、目の前に女の人がいる、という設定で踊るんだけど。一緒にいる女の人が見えるんだけど、でも、死んでるんだよね。死んでるように見えたんだよね。
しかも、亡骸を涙をこらえて愛おしく踊っているとかでは全然なかった。
そこにはただただ色濃く死が横たわっていて、これもしかしたら本人も死んでいるのでは、これはホーンデットマンションなのでは…、…ってずっと思ってた。
亀ソロ、~Follow me~は、わかりやすく死んでた(わかりやすくはない)。
いわゆる「エロい」を排除する(謎の潔癖、と呼んでいる)のはいいとして、そこでなぜ突然「死」がやってくるんだろう、エロと死は近しいものだからだろうか、とか、思って、いたのですが。
「エロい」を排除するから死がやってくるのではなくて、このひとのなかに、生きる喜びと死の誘いが、わりと矛盾せずに同居している、ということなのだろうか。
…というのは。
次(の次)の舞台、『相対的浮世絵 2019.10.25~11.17 東京・本多劇場、2019.11.22~11.24 大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール。
これも、死生観の話というか、本人の役に限れば、「死」なんだよね…。
群像劇的なもので、ぶっちゃけ出番がめっちゃ多いわけでもないし、出番だけならもっと多い人はいる。けど、これが、この役が彼の頭上に降ってきたのは、「死」だからなのか。
でもこっちは、「死」であるからこその、生きる喜び、の方が強く出そうな気がしている。
『HEY!ポール!』が、生きる喜びの衣をまとった死への誘いだったなら、『相対的浮世絵』は、今のりょうちゃんが演ったら、死への誘いの衣をまとった生きる喜びになるのかもしれない。
パブリックイメージ、めっちゃ元気なバカ、なのに(言い方)。
生きる喜びは、死への誘いに勝てるのか。
死への誘いは、生きる喜びよりも強いのか。
どっちをどのくらいのパーセンテージで見て、キャスティングを決めたんだろう。
パブリックイメージ、めっちゃ元気なバカ、なのに。
めっちゃ元気なバカの奥、常にそこにあるような気にさせる、深い諦念。
死への誘い。
生きる、よろこび。