その時私が見た夢は、They武道が2人きりになるという若干のつめたい予感を含んだ現実であり、えだりょ2人きりになるという若干の甘美さを含んだ白昼夢だった。
つめたい甘美な白昼夢。
舞台応援屋の前、ふたりでえびコンに見学に来たことがある。代々木のあの見学用席に並んで、間の幅をつめるように、山本が江田に寄り添っていた印象が強烈に残っている。直球で言ってふたりとも様子が暗かった。
その年は例年あった仕事もなくなって、2015のシンガポール公演が終わってからもう1人はグループに気持ちが向かなくなっているのが客席側から見てもはっきりわかり、先の見えない2016の真っ最中のことだった。
そんな状況の中で、そらまあ、寄り添うわな。
もう1人が舞台応援屋には出ないとなったところで、勝負あった、終わりだ、と私は思っていた。
3人でグループはもう終わりだ。
自動的に2人になるしかない。えだりょになって、2人きりになったら、webの連載は、Theyたくなひとときは続けさせてもらえるのか。否、そもそもThey武道という形を続けさせてもらえるのか。ジャニーズJr.のユニットという形で、ふたりっきりで?えだりょが?KinKi Kidsでもないのに?
…無理じゃね?
…無理だな。
そして幕を開けた舞台応援屋、勝手に諦めて勝手に終わりにしていた客席の私の前で、2人は大きなハートを描いた。踊りながら。
それを見て、少し泣いて、少し夢を見た。それはつめたく甘美な白昼夢で、2人でこの先もこんなふうに、何かを描くことができて、そして、それを時々でいいから、見ることができたなら。
それは、この後にやってくる悪いはずの現実が、それも悪くはないと思えるような、とてもつめたくて、とても甘美な白昼夢だった。
ところが。
「メンバー追加して新しいグループ名になるらしい」
舞台応援屋が始まる頃と終わる頃では状況は激変していて、噂は噂を呼んで、そんな話がいつの間にすすんでたんですカッ!?という状況に突入し、気がついたら札幌で宇宙のブラックホールに吸い込まれてしまった。
これは単純な現実で。
甘美な白昼夢ではなかった。
それからの単純な現実は、仕事の幅を広げつつもグループとしてはつらいことの方が多くて、つらい渦巻きに飲み込まれて飲み込まれて巻き込まれて、そして唐突に終わった。
唐突に終わって。
全部おまえのせいだと石を投げられてそれを避けることもできず、おまえのせいか、うん、そうかもね、と、ぼんやりと、また渦の中にうもれていた私を。
本人が引き上げてくれた。
どうやら、まだ、終わっていなかったらしい。
本人にとっては旧知の、私にとっては新しい「仲間」のひとたちは、皆、限りなく果てしなく優しかった。
「好きですよ、もちろん!」
かたくなにグループのことだけを口にして、ついぞ聞いたことがなかった自分自身の舞台仕事について、「好きですよ」という言葉を引き出してくれたのはその「仲間」たちである。なんかもうそれだけで地の果てまで感謝した。もうグループの話、しなくていいんだ。もう自分のことしゃべってくれるんだ。
それは単純に、うれしいこと、だった。
ところが。
状況証拠が、すべて、江田だと言っていた。
状況証拠が、すべて、江田が事務所を離れて山本と合流して一緒に活動する、と暗示していた。
そうはっきり断言されたわけではないけれど、状況がそのすべてを肯定していた。
いやしかしだけれども。
そんなこと、あります??
みんなが、みーんなが状況証拠を前提に怒ったりわめいたりするなかで、なぜだか私は全然信じられなくて、いやまさかそんなことが、と、いやそんなことあります??と、ずっと信じていなかった。
江田と山本が一緒になったら。
また、山本は自分のことを一切話さなくなる。江田のことしか話さなくなる。江田のことしか考えなくなる。
それはあまりよろしくないのだけど。
でも。
名古屋で、半泣きになりながら、グループで活動したい、と言われた時に。
これは、懇願、というたぐいのものじゃないだろうかと思ってしまって。
そして、そのあと、7月から全部リニューアルします、と、わざわざスーツ着て発表した時の山本のその顔があまりにすっきりして、あまりに落ち着いていたので。
いやわかってんの、わかってんのよ、このひと、一人で仕事しない方がいいってことは。
などと。
その段階で私もたしかに状況証拠を前提に考えていたのだけれど。
でも。そんなことあるわけないじゃん、と。
江田は同情や憐憫だけでは動かない、その程度には私は江田という人を信用しているつもりだったので。
それゆえに。
状況証拠の全部が江田だと言っていても、どうにもそうは思えなかった。ずっと。
「実際、江田と一緒にやるってどうよ?」
旧知のおたくにそう問われた時、
「いや江田と一緒にやるってまだ決まってないし💢」
とか返してしまい。
「いや江田だろ」
と返され。いやそうなんだけど、と思い。
実際どうなの。ぶっちゃけどうなの、山本担のあなたとしては。
そう、聞かれた時に。
「江田じゃない人と一緒にやるか、江田と一緒にやるかの2択だったら、絶対に江田がいい」
そんなふうに、返した。
我ながら即答だった。
聞かれるまで、そんなこと考えたこともなかったけど、自分で引くほど即答だった。
「江田と一緒にやるのがいい、それは本人も絶対そう思ってる。本人がそう思ってて、江田がそれでOKだというなら、そこに私の気持ちは1ミリも関係ない」
関係ないし、それに。
江田じゃない人とやるなら、江田と一緒がいい。それは絶対そう。私がそう思う。
「でもみんな状況証拠で江田だって言うけど、私が一番信じてない。江田が事務所出るようにはどうしても思えない」
そうも言ったら、笑われた。
いや、江田だよ。大丈夫だよ。
そんなふうに。
私なんかより、外野のおたくだったり、直接的に怒ってたりする人たちの方が、よっぽどえだりょを信じてるのかもしれないと思って、反省したりもした。少しだけ。
そして。当日がきて。
まさかそんなことが本当に。
そう思って、直視できなかった。最初。
まさかそんなことが。
これは白昼夢ではないのか。
白昼夢だ。あの時の。これは2016年に一瞬通り過ぎた、つめたくて甘美な白昼夢の。
夢の続きだ。あの時の。
これがあの時の夢の続きなら、またこの先、渦に巻き込まれるかもしれないし、ブラックホールに吸い込まれるかもしれない。一寸先は闇でしかない。
でも、この一瞬に存在する白昼夢は現実だ。
現実で、2人並んでそこに存在している。
オリジナル曲だって。
何言ってんのえだりょが!?
ちょっと2016年の私聞きました!?
そこで絶望してる2016年の私聞きました!?
オリジナル曲つくって、コンサートやるんですってよ!?
つめたくて甘美な白昼夢。
あの時みた夢の続きなのか、そうじゃないのかはわからない。
でも、たしかにあの時にみた夢が現実になって立ち上がっているのだ、今は。
5年前、確かにみた昼間の夢を。
もういちど、みている。